カテゴリ: Rust 更新日: 2026/01/27

Rustの定数(const)と静的変数(static)を徹底解説!コンパイル時評価の仕組みとメモリ配置

Rustのconstがコンパイル時に評価される仕組み
Rustのconstがコンパイル時に評価される仕組み

先生と生徒の会話形式で理解しよう

生徒

「Rustで値を固定したいとき、conststaticがありますが、どう使い分ければいいんですか?」

先生

「良い視点ですね。Rustの定数(const)はコンパイル時に値が決定され、使われる場所に直接埋め込まれます。一方で静的変数(static)はメモリ上の固定された場所に居座り続ける変数です。」

生徒

「コンパイル時に評価されるって、具体的にどういう仕組みなんですか?」

先生

「プログラムを実行する前、つまりビルドしている最中に計算を終わらせてしまう仕組みです。これにより実行時のパフォーマンスが向上します。今日はその内部構造や、静的変数との違いを深掘りしましょう!」

1. Rustの定数とは何かを正しく理解する

1. Rustの定数とは何かを正しく理解する
1. Rustの定数とは何かを正しく理解する

Rustにおける定数は、constキーワードを使って定義します。定数は一度定義すると、その値を変更することはできません。これは不変変数であるletと似ていますが、決定的な違いがあります。定数は「型」を必ず明示しなければならず、さらにその値は「定数式」でなければなりません。

定数式とは、コンパイルを行うタイミングで計算が完了できる式のことです。例えば、単純な数値の足し算や、特定の組み込み関数の呼び出しなどがこれに該当します。実行時にユーザーが入力した値や、ネットワークから取得したデータなどを定数に代入することはできません。この制約があるからこそ、Rustコンパイラはプログラムを最適化し、非常に高速なバイナリを生成できるのです。

また、定数にはスコープ(有効範囲)があります。関数の中で定義すればその関数内だけで有効ですし、モジュールのトップレベルで定義すれば、そのモジュール全体、あるいは公開設定によってはプログラム全体から参照可能です。定数の名前は、Rustの慣習として「すべて大文字のヘビ記法(SCREAMING_SNAKE_CASE)」で記述するのが一般的です。

2. コンパイル時評価の仕組みと定数展開

2. コンパイル時評価の仕組みと定数展開
2. コンパイル時評価の仕組みと定数展開

Rustの定数が優れている最大の理由は「コンパイル時評価(Compile-time evaluation)」にあります。これは、計算処理を実行時のCPUに任せるのではなく、コンパイラがビルド中に代行する仕組みです。この機能を支えているのが「定数評価器(miriなどの技術基盤)」です。

例えば、定数として「1日の秒数」を計算する場合を考えてみましょう。const SECONDS_IN_DAY: u32 = 60 * 60 * 24;と記述した場合、コンピュータは実行中にわざわざ掛け算を行いません。コンパイルが終わった後のバイナリデータには、既に計算結果である「86400」という数値が直接書き込まれています。これを「定数展開」や「インライン化」と呼びます。

この仕組みにより、実行時のオーバーヘッドがゼロになります。複雑な数式であっても、コンパイル時に解決できれば、実行速度を一切低下させることなく、コードの可読性を保つことができるのです。これは組み込み開発やゲームエンジン開発など、極限のパフォーマンスが求められる現場で非常に重宝されるRustの強力な武器の一つと言えるでしょう。


const THRESHOLD: i32 = 100;
const MAX_SCORE: i32 = THRESHOLD * 10; // コンパイル時に1000として計算される

fn main() {
    let current_score = 850;
    if current_score < MAX_SCORE {
        println!("目標達成まであと少しです!");
    }
}

3. 定数と不変変数の決定的な違い

3. 定数と不変変数の決定的な違い
3. 定数と不変変数の決定的な違い

Rustを学び始めたばかりの方が混同しやすいのが、constletによる不変変数の違いです。let x = 5;と書くと、xは変更できない変数になりますが、これはあくまで「実行時」の変数です。対してconstは、メモリ上のスタック領域やヒープ領域に場所を確保するのではなく、コードそのものに値を焼き付けます。

letで宣言された変数は、プログラムの実行がその行に到達したときにメモリが割り当てられます。一方、constはメモリのアドレスを持ちません。定数が参照されるたびに、その場所に値のコピーが配置されるイメージです。このため、定数のアドレスを取得しようとしても、それは通常の変数のように一意の場所を指すわけではないことに注意が必要です。

また、letは型推論が働きますが、constはプログラマが明示的に型を書く必要があります。これは、コンパイラがバイナリを構築する際に、そのデータがどれだけのサイズを占めるかを即座に判断できるようにするためです。厳格に型を指定することで、予期せぬ型変換によるバグを防ぐ効果もあります。

4. 静的変数であるstaticの役割とメモリ配置

4. 静的変数であるstaticの役割とメモリ配置
4. 静的変数であるstaticの役割とメモリ配置

定数とよく比較されるのがstaticキーワードを用いた「静的変数」です。静的変数は、プログラムの開始から終了まで、メモリ上の「固定された場所」に存在し続けるデータです。定数(const)が使われる場所にコピーされるのに対し、静的変数は唯一無二の実体としてメモリ(データセグメント)に配置されます。

静的変数の最大の特徴は、メモリのアドレスが固定されていることです。これにより、プログラムのどこからでも同じメモリを参照することが可能になります。また、静的変数は大きなデータ構造を扱う際にも適しています。定数の場合は使用箇所ごとにデータが複製される可能性があるため、巨大な配列などを定数にするとバイナリサイズが膨らむ恐れがありますが、静的変数なら実体は一つだけで済みます。

ただし、静的変数は「ライフタイム」が常に'staticとなります。これはプログラムが動いている間ずっと有効であることを意味します。グローバルな設定情報や、共有のリソースを管理する際に利用されますが、Rustの安全性の観点から、静的変数の取り扱いにはいくつかのルールが存在します。


// 静的変数の定義(メモリ上の固定位置に配置される)
static APP_NAME: &str = "Rust学習ポータル";
static MAX_RETRY_COUNT: u8 = 5;

fn main() {
    println!("アプリケーション名: {}", APP_NAME);
    println!("最大リトライ回数: {}", MAX_RETRY_COUNT);
}

5. ミュータブルな静的変数とunsafeの壁

5. ミュータブルな静的変数とunsafeの壁
5. ミュータブルな静的変数とunsafeの壁

通常、Rustの変数は安全性を重視していますが、どうしても「グローバルに書き換え可能な変数」が必要になる場面があります。Rustではstatic mutを使うことで、値を変更できる静的変数を定義できますが、これには大きなリスクが伴います。

複数のスレッドから同時にひとつの静的変数にアクセスして書き換えを行うと、「データ競合」が発生します。これはプログラムがクラッシュしたり、予期せぬ動作をしたりする原因になります。そのため、Rustではstatic mutな変数にアクセスしたり、値を変更したりする操作はすべてunsafeブロックの中で行う必要があります。

初心者のうちは、このstatic mutを極力避けるべきです。グローバルな状態管理を行いたい場合は、標準ライブラリのMutexRwLockを組み合わせて、安全にスレッド間共有ができる仕組みを利用するのがRustらしい書き方です。安全性を犠牲にせず、いかに効率よくデータを管理するかが、Rustエンジニアとしての腕の見せ所と言えるでしょう。


static mut COUNTER: u32 = 0;

fn increment() {
    // static mutへのアクセスはunsafeが必要
    unsafe {
        COUNTER += 1;
    }
}

fn main() {
    increment();
    unsafe {
        println!("現在のカウント: {}", COUNTER);
    }
}

6. 定数関数(const fn)で広がるコンパイル時計算

6. 定数関数(const fn)で広がるコンパイル時計算
6. 定数関数(const fn)で広がるコンパイル時計算

Rustにはconst fnという非常に強力な機能があります。これは、その関数がコンパイル時に実行可能であることをコンパイラに伝える仕組みです。通常の関数は実行時(ランタイム)に呼び出されますが、const fnとして定義された関数は、定数の初期化式の中で呼び出すことができます。

これにより、複雑な初期化ロジックをコンパイル時に終わらせることができます。例えば、特定のアルゴリズムに基づいたルックアップテーブルの作成や、構造体の複雑な初期状態の計算などが挙げられます。Rustのバージョンが上がるごとに、このconst fnの中でできることは増えており、ループ処理や条件分岐なども徐々にサポートされるようになってきました。

コンパイル時計算を駆使することで、実行時のコードを極限までシンプルにし、バグの混入を防ぎつつパフォーマンスを向上させることができます。これは「ゼロコスト抽象化」というRustの理念を体現する機能の一つです。プログラムが動き出す前に、既に正しい結果が準備されているという安心感は、他の言語にはない魅力です。


// コンパイル時に計算可能な関数
const fn calculate_buffer_size(n: usize) -> usize {
    n * 1024
}

// 関数の結果を定数として使用
const CACHE_SIZE: usize = calculate_buffer_size(4);

fn main() {
    println!("キャッシュサイズは {} バイトです。", CACHE_SIZE);
}

7. constとstaticの使い分けガイドライン

7. constとstaticの使い分けガイドライン
7. constとstaticの使い分けガイドライン

ここまで学んできた内容を踏まえて、実際にどのように使い分けるべきかを整理しましょう。基本的には、ほとんどのケースでconstを選択するのが正解です。値が小さく、インライン展開されても問題ない数値や文字列などは定数として定義します。これにより、コンパイラの最適化の恩恵を最大限に受けることができます。

staticを使うべきケースは、主に以下の3つです。一つ目は、大きなデータを扱う場合で、メモリの節約のために実体を一つに絞りたいとき。二つ目は、変数のメモリアドレスを特定し、それを他の関数や外部のC言語ライブラリなどと共有する必要があるとき。三つ目は、内部可変性を利用して、実行時に安全に値を更新するグローバルな状態を作るとき(この場合はAtomic型やMutexを併用します)です。

Rustの設計思想は「明示的であること」です。自分が定義しようとしているデータが、単なる「ラベル」なのか、それとも「実体」なのかを意識することで、より適切なキーワードを選べるようになります。この使い分けができるようになれば、Rustのメモリ管理モデルに対する理解が一層深まっている証拠です。

8. メモリ安全性と定数の深い関係

8. メモリ安全性と定数の深い関係
8. メモリ安全性と定数の深い関係

Rustがなぜこれほどまでに定数や静的変数の扱いに厳しいのか。それはすべて「メモリ安全性」を守るためです。C++などの言語では、グローバル変数の初期化順序が未定義であることから生じるバグ(Static Initialization Order Fiasco)が問題になることがありました。Rustでは、コンパイル時に値を決定することを強制するか、あるいは安全な初期化の仕組みを提供することで、この問題を根本から解決しています。

また、定数は不変であることが保証されているため、複数のスレッドから同時に読み取っても競合が発生しません。これは並行処理プログラミングにおいて非常に大きなメリットとなります。Rustのコンパイラは、私たちが書いたコードが安全に動作するかを常に監視しており、定数や静的変数のルールもその厳格なチェックの一環なのです。

初心者のうちはコンパイルエラーに苦しむこともあるかもしれませんが、それはコンパイラが「将来起こりうる実行時のクラッシュ」を未然に防いでくれているからです。定数一つをとっても、その背後にはRustの安全への強いこだわりが詰まっています。この仕組みを味方につけることで、堅牢で高速なアプリケーションを構築できるようになるでしょう。

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