カテゴリ: Rust 更新日: 2026/02/26

RustのString型を徹底解説!ヒープメモリ管理と所有権の仕組み

RustのString型の仕組みとヒープ管理
RustのString型の仕組みとヒープ管理

先生と生徒の会話形式で理解しよう

生徒

「Rustの所有権(Ownership)ってよく聞くんですが、何のためにあるんですか?」

先生

「Rustでは、所有権(Ownership)という仕組みでメモリ管理を行い、ガベージコレクションなしでもメモリ安全を実現できます。これがRustの大きな特徴です。」

生徒

「所有権があると、具体的に何が防げるんですか?」

先生

「例えば、二重解放ダングリングポインタデータ競合などのバグをコンパイル時に防ぎやすくなります。まずは基本ルールから見ていきましょう!」

生徒

「なるほど。特にString型を使うときにムーブとかヒープという言葉が出てくるんですが、これらも所有権に関係があるんですか?」

先生

「大ありです!String型は中身を自由に変えられるように、ヒープという特別なメモリ領域を使っています。その管理を安全に行うためのルールを詳しく見ていきましょう。」

1. Rustの所有権(Ownership)とは?

1. Rustの所有権(Ownership)とは?
1. Rustの所有権(Ownership)とは?

Rustの所有権(Ownership)は、値(データ)を「誰が持っているか」を明確にし、スコープ(有効範囲)と連動してメモリを安全に管理する仕組みです。C言語やC++のように手動でfreedeleteを呼ばなくても、Rustは所有権のルールに従って自動的にリソースを解放できます。

この仕組みの真価が発揮されるのが、実行時にサイズが変わる可能性のあるデータです。その代表格であるString型を理解することは、Rustのメモリ管理手法である「ヒープ管理」の本質を理解することに直結します。なぜString型をコピーするとエラーが出るのか、その裏側にあるメモリの構造を紐解いていきましょう。

2. String型が利用するヒープメモリの仕組み

2. String型が利用するヒープメモリの仕組み
2. String型が利用するヒープメモリの仕組み

Rustのデータは、主に「スタック(Stack)」と「ヒープ(Heap)」という二つのメモリ領域のいずれかに保存されます。数値や論理値などのサイズが固定された単純なデータはスタックに置かれますが、String型のように長さが変化するテキストデータは、実行時に確保される「ヒープ」という領域に実体を置きます。

ヒープを利用する場合、まずOSに「これくらいの容量を貸してください」とリクエストを出してメモリを確保します。このとき、スタック上には「データがどこにあるかを示すポインタ」「データの長さ」「確保した容量」という三つの小さな情報が保管されます。この二段構えの構造こそが、String型が柔軟に文字列を操作できる理由です。

3. スタック上の情報とヒープ上の実体データ

3. スタック上の情報とヒープ上の実体データ
3. スタック上の情報とヒープ上の実体データ

String型の変数を宣言したとき、手元の変数(スタック)に入っているのは、あくまでヒープ上のデータへの「住所」です。住所録のようなイメージですね。この住所録自体はサイズが決まっていますが、住所が指し示している先の家(ヒープの実体)は、必要に応じて増築したり改築したりできます。

しかし、ここで問題になるのが「住所録を複製したらどうなるか」という点です。もし単純に住所だけを二人の人に教えた場合、二人が同時に家を壊そうとしたり、片方が勝手に改築してもう片方が混乱したりする恐れがあります。Rustの所有権は、この混乱を避けるために「住所録の原本を持っているのは常に一人だけ」というルールを徹底しているのです。

4. String型のムーブセマンティクスとデータ複製

4. String型のムーブセマンティクスとデータ複製
4. String型のムーブセマンティクスとデータ複製

Rustでは、String型の変数を別の変数に代入すると、データのコピーではなく「所有権の移動(ムーブ)」が発生します。これは、スタック上にあるポインタや長さの情報を新しい変数に渡し、元の変数を無効化することを意味します。これにより、同じヒープ領域を指す変数が二つ存在することを防ぎます。

もしムーブではなく、ヒープ上のデータも丸ごと複製したい場合は、明示的に clone() メソッドを呼び出す必要があります。クローンはヒープのメモリを新しく確保し直して中身をすべてコピーするため、安全ですが処理コストがかかります。Rustは「重い処理はプログラマが明示しない限り勝手に行わない」という哲学を持っているのです。


fn main() {
    let s1 = String::from("こんにちは");
    let s2 = s1; // s1からs2へ所有権がムーブする

    // println!("{}", s1); // ここでs1を使おうとするとコンパイルエラー!
    println!("s2の中身: {}", s2); // s2は有効です
}

5. スコープの終了とドロップ関数によるメモリ解放

5. スコープの終了とドロップ関数によるメモリ解放
5. スコープの終了とドロップ関数によるメモリ解放

ヒープメモリの最大の悩みは「いつ解放するか」です。C言語などの古い言語では、使い終わったメモリをプログラマが手動で返却しなければならず、忘れればメモリリーク、二回返せばクラッシュの原因になりました。Rustでは、この「返却」を所有権の仕組みで自動化しています。

変数が定義されたスコープ(波括弧 {})を抜けると、その変数が持っている所有権も消滅します。このとき、Rustは自動的に drop という特別な関数を呼び出し、ヒープ上のメモリをOSへ返却します。所有者は一人しかいないことが保証されているため、どのタイミングで誰がメモリを片付けるべきかがコンパイル時に確定しているのです。

6. 動的な文字列操作と容量管理のプロセス

6. 動的な文字列操作と容量管理のプロセス
6. 動的な文字列操作と容量管理のプロセス

String型の便利な点は、後から文字を追加できることです。このとき、メモリ内部では面白いことが起きています。最初に確保した容量(Capacity)を超えて文字を追加しようとすると、Rustは現在の場所よりも広い新しい土地(メモリ領域)をヒープに探し出し、古いデータをすべて新しい場所へ引っ越しさせます。

この「再確保」という処理は、住所(ポインタ)が書き換わる大きな変更ですが、所有権のルールがあるため安全に行えます。他の場所から古い住所を握りしめている人がいないことを、コンパイラが保証してくれているからです。このように、一見複雑なメモリ操作も、所有権のおかげでプログラマは安心して記述できるのです。


fn main() {
    let mut text = String::with_capacity(5); // 最初から5文字分の枠を確保
    println!("長さ: {}, 容量: {}", text.len(), text.capacity());

    text.push_str("Rust");
    println!("追加後: {}, 容量: {}", text, text.capacity());

    text.push_str(" Programming"); // 枠を超えるので再確保が発生する
    println!("最終: {}, 容量: {}", text, text.capacity());
}

7. 借用と参照を活用した効率的なメモリ利用

7. 借用と参照を活用した効率的なメモリ利用
7. 借用と参照を活用した効率的なメモリ利用

所有権のムーブばかりでは、関数に文字列を渡すたびに元の場所で使えなくなってしまい不便です。そこで登場するのが「借用(Borrowing)」、つまり & 記号を使った参照です。参照は、所有権を渡すのではなく、単に住所を一時的に見せるだけの仕組みです。

参照を使えば、ヒープ上の巨大なデータを移動させたりクローンしたりすることなく、複数の場所から安全にアクセスできます。不変の参照(&String)なら何人でも同時に見ることができます。ただし、誰かが貸し出し中の間は、元の持ち主であっても勝手に家を壊したり改築したり(解放や変更)することはできないというルールで守られています。

8. String型と文字列スライスの決定的な違い

8. String型と文字列スライスの決定的な違い
8. String型と文字列スライスの決定的な違い

String型を学ぶとき、必ずセットで現れるのが &str(文字列スライス)です。この二つの違いもヒープ管理に関わります。Stringは「ヒープ上にデータを持ち、管理する権限」がありますが、&str は「ヒープやスタックなど、どこかにあるデータの一部を指す窓」のようなものです。

スライスは所有権を持たないため、非常に軽量です。関数の引数などで「中身を読み取るだけで、書き換えや所有はしない」という場合は、String ではなく &str を使うのがRustのベストプラクティスです。これにより、所有権のパズルに悩まされることなく、メモリ効率の極めて高いプログラムを組み立てることが可能になります。


fn display_upper(s: &str) {
    println!("大文字で表示: {}", s.to_uppercase());
}

fn main() {
    let my_string = String::from("rust memory");
    
    // Stringの参照を渡すと、自動的に&strとして扱われる
    display_upper(&my_string);
    
    // 元のStringはまだ有効
    println!("元の文字列: {}", my_string);
}

9. ダングリングポインタを防止するRustの盾

9. ダングリングポインタを防止するRustの盾
9. ダングリングポインタを防止するRustの盾

他の言語でよくある恐ろしいバグに、既に解放されたメモリを指し続けてしまう「ダングリングポインタ」があります。例えば、関数の中で作った文字列の住所だけを外に返し、関数が終わって本体が消えた後にその住所を使おうとするケースです。

Rustでは、このようなコードはコンパイルすら通りません。所有権とライフタイム(生存期間)という仕組みによって、「本体が消えるタイミング」と「参照を使っている期間」をコンパイラが計算しているからです。String型のようなヒープを管理する複雑な型であっても、Rustはこの強力な盾で私たちのプログラムをクラッシュから守ってくれます。

10. なぜRustのヒープ管理は画期的なのか

10. なぜRustのヒープ管理は画期的なのか
10. なぜRustのヒープ管理は画期的なのか

最後に、Rustのヒープ管理がいかに革命的かを再確認しましょう。これまでの言語は、「速度を求めて手動で管理し、バグを出す(C/C++)」か、「安全を求めてGCを導入し、速度を犠牲にする(Java/Python)」かの二択でした。Rustは、所有権という論理的なルールを導入することで、「手動管理と同等の速度」と「GC以上の安全性」を両立させました。

String型を一つ使うだけでも、その裏側ではこうした緻密な計算と厳格なルールが働いています。最初は所有権のエラーに戸惑うかもしれませんが、それはコンパイラがあなたの代わりにメモリの不備を指摘してくれている証拠です。この仕組みを味方につければ、大規模で高速なアプリケーションも、確かな自信を持って開発できるようになるでしょう。

String型の仕組みとヒープ管理、いかがでしたか?Rustの所有権は一見厳しく感じますが、その目的は「誰もが安全に高速なコードを書けるようにすること」にあります。次は、さらに高度な「可変参照」や「スライス」の使い方について学んでみると、よりRustの世界が広がりますよ!

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